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J.S.バッハ
音楽の捧げものBWV.1079

管弦楽組曲第2番ロ短調BWV.1067*

カール・ミュンヒンガー/シュトットガルト室内管弦楽団

DECCA 430266

P:James Mallinson,Erik Smith*

E:James Rock,Andrian Reeve*


録音1976/07, 1961/06*
ルートヴィヒスブルク城,ドイツ
ヴィクトリア・ホール,ジュネーヴ*

曲目
音楽の捧げものBWV.1079
1. Ricercar a 3 7:26
2. Canon peretuus a 2 1:34
3. Canon a 2 violini in unisono 0:47
4. Canon a 2 per motum contrarium 0:52
5. Canon a 2 per augmentationem contrario motu 2:19
6. Canon a 2 0:45
7. Canon a 2 1:56
8. Canon a 2 per tonos 2:23
9. Canon perpetuus contrario motu 1:21
10. Canon a 4 5:11
11. Fuga canonica 2:01
12. Largo 4:56
13. Allegro 6:17
14. Andante 2:56
15. Allegro 3:15
16. Ricercar a 6 9:22
管弦楽組曲第2番BWV.1067
17 Ouverture 6:39
18. Rondeau 1:56
19. Sarabande 3:07
20. Bouree 1 &2 1:58
21. Polonaise and Double 3:30
22. Menuet 1:22
23. Bandinerie 1:24
  ここ10年ばかり年越しは「音楽の捧げもの」を聴いている。以前は第9ならぬ第3「エロイカ」を聴いていたのであるがさすが深夜だけあって気が引けた。その点「音楽の捧げもの」は真夜中に聴いてもそんなに気兼ねなく聴けるのでこちらに切り替えたいきさつがある。
 「音楽の捧げもの」は新年を迎えるにあたって何か厳粛な雰囲気にさせる力を持っており、「3声のリチェルカーレ」が流れると心が洗われる。
そして何種類かの「音楽の捧げもの」を聴いてきたが最近はこのミュンヒンガー盤が一番しっくりとくる。
 日本盤も同じジャケットデザインで1990年4月1日に発売されたが併録の曲目が全く異なっている(F00L23135)。ミュンヒンガーは「音楽の捧げもの」を3回録音しており、そのいずれも曲の配列は3声、各種カノン、トリオ・ソナタ、6声のリチェルカーレの順となっていてリチェルカーレはいずれも弦楽合奏となっている。この弦楽合奏はすばらしい。現在は古楽器での演奏が主流であるがミュンヒンガーの厳格なまでのこのアプローチは忘れがたいものがある。
 とかく、この曲は半音階を使ったフレードリッヒ大王の主題に基づいていて一聴すると現代音楽のような調べで、現にウェーベルンなんかが「6声のリチェルカーレ」を編曲している。小生も元はと言えばこのウェーベルン編曲の「6声のリチェルカーレ」を最初に聴いてからこのバッハにたどり着いた口である。この曲に関しては成立のエピソードは事欠かないくらいいろいろあり、パズル的な曲目構成といい楽器指定のない演奏方法といい、どれ一つとっても謎が含まれていて演奏者によって全く解釈が違っているのも一つの魅力である。
 最大の隠し味はリチェルカーレ(Ricercar)でその語源は「Regis Iussu Cantio Et Reliqua Canonica Arte Resoluta(王の命令による楽曲。および、カノン技法で解決されるその他の楽曲)」となっており、頭文字を並べると…。つまり、バッハの言葉遊びとなっていることだろう。
 ミュンヒンガーの演奏はこのリチェルカーレを両方とも弦楽合奏で演奏している。手持ちのレーデル盤、メニューイン盤はともに3声はチェンバロ独奏で始めているが、ここは対をなすという意味ではミュンヒンガーに軍配が上がる。最初の3声のリチェルカーレで雰囲気は一気に厳粛になるからである。聴きはじめの頃はレーデル盤を利用していたがいつしかミュンヒンガーになったのもまさに3声のこの出だしの雰囲気からである。「王の主題による各種カノン」は各楽器のソロを生かした堅実な演奏。聞き物はやはりトリオ・ソナタと6声のリチェルカーレだろう。マルティン・ガリングノチェンバロ、ハンス・ペーター・ウェーバーのコールアングレ、ロバート・ドーンのフルート、それにゲオルグ・ベノフのヴァイオリンの絡みが冴え渡り「音楽の捧げもの」の白眉を形作っている。そして締めはまさにトリを務めるにふさわしい重厚な中にも品格のあるサウンドで6声のリチェルカーレが流れる。解釈により様々な曲目配列があるが対位法を完成したバッハの音楽はこのミュンヒンガーの配列が理にかなっているように思う。バッハは後に「フーガの技法」で壮大な宇宙のパノラマを描くが、その前段として大王の主題をテーマにすばらしい小宇宙を作り出している。内容からすれば現代音楽にも通じる音の世界を既に18世紀に完成させているのは驚異に値する。
 併録は管弦楽組曲の第2番が選ばれているがこちらはランパルのフルートでいささか明るいサウンドに仕上がっているが骨格はがっしりとしておりドイツの重厚なバッハが描き出されている。バッハにはこういう演奏が似合う。
                                                           2006/01/03

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