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ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調Op.88
シューベルト/交響曲第5番変ロ長調*


ブルーノ・ワルタター/コロンビア交響楽団

CBS SONC10242

P:Thomas Frost

E:Paul Mayers

録音11961/02/08,12、196002/26,29、03/03*

リージョン・ホール、ハリウッド

演奏時間
交響曲第8番
第1楽章
9:59
第2楽章
9:16
第3楽章
5:57
第4楽章
10:09
tatal
35:21
交響曲第5番
第1楽章
5:52
第2楽章
10:38
第3楽章
5:00
第4楽章
6:24
tatal
18:54

 レコードを整理していたらとっくに処分してしまったと思っていたワルター/コロンビア交響楽団のドヴォルザーク交響曲第8番が出てきた。何か得した気になって久しぶりに針を落としてみた。アナログで聴く音は何処かウォームトーンで音に潤いがある気がする。所有しているLPはCBSソニーに発売権が移ってからのもので、カッティングはノイマンのSX68マークを使用したものである。当時はこのカッティング方式がブームのようなもので各社競ってこれを謳い文句にしていた。

 ワルターは生涯に商業録音としては、ドヴォルザークの交響曲はこの8番と9番しか録音していない。

 第1楽章のチェロによるコラール風の出だしから聴かせてくれる。西側のコロンビア交響楽団は編成はあまり大きくないが、バランスの採れた響きで良く鳴っている。現の柔らかい響きが印象的で郷愁を誘う。ワルターのドヴォルザークというとピンとこない組み合わせのような気がするが、とんでもない。「新世界」なんかは60年代は代表盤だったし。この8番とて自分的にはベスト3に入る名演だ。

 第2楽章は非常に牧歌的の響きのする楽章で、のどかな田園風景が目の前に広がる。ワルターもソロ楽器をさりげなく目立たせ微笑ましい雰囲気を作り出している。ダイナミックな音のコントラストも見事でティンパニの響きがいい味を出している。この録音はハリウッドのリージョンホールでなされているがいい録音だ。編成が大きくないので音に透明感がありステレオ初期というハンデを乗り越えて書く楽器の音がすこぶる明瞭に聞こえる。プロデューサーは多分ジョン・マックルーアだと思われますが表記が無いので確信は持てない。

 第3楽章のアレグレットは全体に遅めのテンポをとるワルターとしては比較的早く(とは言っても6分弱)、情緒タッブリにメロディラインを浮かび上がらせての演奏となっている。

 この演奏の白眉は何といっても第4楽章である。冒頭のトランペットのファンハーレはややゆっくり目に、しかし確信を持って農民たちの収穫の喜びを表しているかのようだ。それに続くチェロの奏する主題による変奏が一年の苦労を振り返るように地に着いたテンポで描かれ、圧巻はその変奏途中に現れるティンパニの強烈なうち込みで、弦のスタッカート気味のリズムも独特のフレージングで聴かせてくれる。このリズムによる演奏は他の指揮者にはまねの出来ないワルターの独壇場だ。フルートのソロも巧く遅いテンポの中流麗に吹き鳴らしていて、この曲を聴いていると至福の時を共有している喜びを感じることが出来る。4楽章だけの演奏を取ればこのワルターが一番である。

 ワルターの演奏ではベートーヴェンの第6番が代表盤といえるがこのドヴォ8も、同じように田園的響きがするので、そういう意味では和ルターの体質に合っているのではないだろうか。ジャケットもそのイメージに合っているといえる。

 一方シューベルトも交響曲第はこの5番を初めとして8、9番しか録音していない。

 ここでも第1楽章はゆっくり目のテンポで開始される。これが非常に柔らかみのあるふっくらとした演奏でワルターの人間的温かさを感じる。ただ、サウンド的にはホールトーンが多めで音が全体に奥まって聞こえるのでスケール感は感じられない。

 第2楽章はアンダンテのしっとりとした楽章で弦のアンサンブルが美しく響く。構成的には一番演奏時間の長い楽章で展開部を持たないソナタ形式で書かれている。ワルターは同じコロンビア交響楽団と55年にもこの曲を録音しているが、それよりは、この楽章だけは幾分速いテンポで演奏していて物悲しいオーボエの響きが郷愁を誘う。

 メヌエットの第3楽章は軽快なアレグロのテンポで弦の美しいサウンドが目の前に広がる。

 続く第4楽章は旧録音より30秒近くもゆっくりとした演奏で、それでも弦のアタックとフォルテの膨らましはよりダイナミックで響きは充実している。わずか5年の間隔でこの曲を再録音したのは同じコロンビア交響楽団の名前こそあれ、55年は東側のオケで、この60年は西側のオケで録音してる。モノラルとステレオの違い以上にワルターには以前の録音に不満が合ったのだろうか。  

 そういえば、この曲はティンパニとトランペットが使われていない曲なので、同じ構成をとるモーツァルトの交響曲第40番と比べるとやや、響きの充実度ではやや見劣りがする。ここら辺がシューベルトの若き時の作品の限界なのだろうか、

 このレコードのジャケットはどうも日本独自のもので、組み合わせは変わっても国内盤ではたびたびこの曲のジャケットとして登場している。ちなみに、シューベルトの交響曲第5番とカップリングされている組み合わせはCDでは現在発売されていないようだ。




                                                                          2006/05/24

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