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メンデルスゾーン
交響曲第4番イ長調Op.90「イタリア」
序曲「フィンガルの洞窟」
序曲「異国からの帰郷」
序曲「美しいメルジーネの物語」

ペーター・マーク/ベルン交響楽団

IMP PCD824

P:ジョン・ボイデン

E:トニー・フォークナー

録音:1985/08

演奏時間
交響曲第4番「イタリア」
第1楽章
11:45
第2楽章
6:02
第3楽章
7:00
第4楽章
5:57
total
30:44
序曲「フィンガルの洞窟」
10:56
序曲「異国からの帰郷」
7:10
序曲「美しいメルジーネの物語」
12:01
ガジノ,ベルン
 このCDは国内盤としてはファンハウス・クラシックから1988年1月に28ED1018の品番で発売されたことがある。上記のデータはそちらを参考にした。というのも英IMP盤には演奏時間も含めて詳しい録音データの記載が無いからである。こういう点は独立系レーベルは不備が多い。
  さて、この「イタリア」は実にマークの初録音である。第3番「スコットランド」でのロンドン交響楽団との59年の録音を聴いてそのフレッシュなサウンドが耳に残っているものにとって、このベルン交響楽団との録音はマークの名を再認識させる上でインパクトのある録音だった。この録音の後マークはアーツにマドリッド交響楽団と全集を録音しているのを見てもいかにメンデルスゾーンを得意にしていたかが伺い知れる。
 それまでマークはデッカから干され、尚かつ自ら禅寺で修行隠遁生活を経てからはボックス、ターナバウトに細々と録音を残していたが大手メジャーからはついぞ新譜は発売されなかった。こつこつと集めたフィルハーモニア・フンガリカとのシューベルトの交響曲集のレコードなどはすばらしい演奏でずっと愛聴していた。最近こちらもmembranなるレーベルからセットで発売され大いに喜んでいる。(222165)
 メインの交響曲第4番「イタリア」は一口で言うならば聴き込むほどに味のある演奏ということができる。第1楽章は小生の所有するCDの中で一番遅いテンポの演奏となっている。それでもその遅さを感じさせない見事なテンポ設定と欠く楽器のバランスで見事にオーケストラをコントロールしている。特徴的なのはクラリネットの扱いで全体のバランスを崩す限界のところまで目立たせながらそこは絶妙なバランスで音楽を鳴らしているのだ。オーケストラは第2ヴァイオリンを右側に配置した対向配置で弦の掛け合いが生きている。オーケストラもよく付いてきて好演している。マークは全体のテンポはほとんどいじらず、インテンポでぐいぐいと引っ張っていく。
 第2楽章は標準的なテンポで淡々と進めていくが、主旋律を十分に歌わせて聴かせるつぼだけはちゃんと押さえている。
 第3楽章も基本的なスタンスは同じであるがテンポは全体に遅めでじっくりと音楽を表現している。これとは対照的に第4楽章はサルタレッロのリズムを生かし快調なテンポで音楽が突き進む。他の指揮者と比べると取り立てて早い訳ではないが第3楽章との対比で早く感じられる。この「イタリア」は聞き終わった後音楽が浄化され心地よいシャワーを浴びた後ような不思議な充実感に包まれる。マーク・マジックなのかもしれないがこういう感覚は早々味わえるものではない。
 「フィンガルの洞窟」は彼の十八番とも言える演奏で、基本的なスタンスはロンドン交響楽団との録音と変わりはないが導入部は若干遅めのテンポでさらに陰影の深い演奏となっている。ただロンドン響の方が全体の音のバランスがいいかもしれない。ベルン響はこの曲にはややサウンド的に音の厚みにかけるのが気になるところだ。
 さて、ここでは「フィンガルの洞窟」以外の珍しい序曲が2曲収録されている。特に「異国からの帰郷」は親しみやすいメロディラインを持った佳曲でもっと一般に演奏されてもいい曲の一つだろうし、「美しいメルジーネの物語」も渋い作品ながら導入部は木管をうまく使い「真夏の夜の夢」の音楽のような幻想的な雰囲気を持った曲調である。しばらくすると「スコットランド」を彷彿させるアップテンポの弦の旋律に変わりなかなか劇的な仕上がりとなっている。マークの渋い選曲とプログラミングを楽しめる一枚としていつまでも座右に置いておきたい名盤である。


 
                                                            2006/01/26

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