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ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」* ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第18番変ホ長調Op.31 ダニエル・バレンボイム/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 <ピアノ>アルトゥール・ルービンシュタイン BMG BCVV-37220 E:不明 録音:1975/03,04*
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生涯3度録音した「皇帝」の中では出色の出来映え。難と恩とし88歳の時の録音である。実に風格のある演奏で格調高いピアノの響きにほれぼれと聴き入ってしまう。個人的にもこの演奏は気に入っていて最初の出会いはレコードだった(RCA ARL11418)。ジャケットは同じ写真でバレンボイムのもみあげが黒々としているのが印象的であった。 第1楽章に22分以上かかる演奏はそうそうあるものではなく、当時はその異常に遅い演奏にも興味があった。でも、聴いてみると遅さを感じることは無く返ってその堂々とした演奏に時間の経つのを忘れてしくった記憶がある。いま、改めて聴いてもそういう感触は変わらない。手持ちでも第1楽章の演奏に22分以上かけているのはこのルービンシュタイン盤とグールド/ストコフスキー盤(22:00)、そして奇しくも指揮を執っているバレンボイムがクレンペラーと録音した演奏でそちらは22:56かけている。でも、聴感上は明らかにルービンシュタインの方が遅い。これは冒頭の主題提示の部分から既にルービンシュタインのテンポになっているからでバレンボイムは必死でそのテンポに食らいついている感じがある。そしてテンポの一貫性から言えばこのルービンシュタイン盤は一日の長があり、バレンボイムの演奏の方は最初こそ自分のテンポでひき始めるもののあっという間にクレンペラーの術中に嵌ってしまっている感がある。ちなみに、彼自身による弾き振りのベルリンフィルとの録音は20:53というタイムからも頷ける。 この比類の無いスケール感の第1楽章はゆっくりしたテンポの中にもルービンシュタインの遊び心満載で細かいテンポの揺らしやポルタメントなど思わずにやっとしてしまう。これに対してバレンボイムも15分前後の主題の再現部でのオーケストラの強奏にトランペットを思い切り吹かせている。第2楽章もこぼれんばかりの音のしずくの輝きでアダージョといいながらもルービンシュタインのピアノの音色は輝いて聴こえる。ここはやや控えめにオーケストラが伴奏を付けているのでいやが上でもピアノが目立つ演出だ。一転して第3楽章はピアノとオーケストラが丁々発止の掛け合いでスリリングな演奏が展開される。 併録のピアノ・ソナタ第18番も名演で曲目は地味ながら美しい響きが展開される。ショパン弾きととかく言われるルービンシュタインだがこの演奏でも一音一音を愛おしむように紡ぎ、揺るぎないテクニックと粒がそろいバランスのとれた音色で引き込まれる。バックハウスのような無骨さとは無縁のベートーヴェンが展開される。 こうして見てくるといかにこの演奏が特異かということが分かるがけだし突出した名演であることは疑う余地がない。演奏はすばらしいが録音は今一で、K2カッティングを期待してのCDであったが低域不足でその点では期待は裏切られた。そしてレコードアカデミー受賞の名盤ながら相変わらず評論家諸氏の評価は一定しない。一般リスナーの方が堅実な評価をしている。 2005/11/26 |
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